人事評価制度が、部レベルの大きな組織単位の中だけで実施され、
運用されるのでしたら、前のステップで課題とした<二次評価者>
段階での評価の調整で完了できます。
しかし、複数の部があり、全社・全体で評価を決定する、評価結
果を反映させた<処遇>を決定する場合、少し、というか、かなり
というか、問題が発生します。
異なる部(レベル)の間での評価の違い、公正さの欠如などが
どうしても起きがちで、放置できません。
それらの問題があることをチェックし、より公正さを高めていく
ことは、人事評価制度所管部門と人事(評価)委員会などの責任で
もあります。
実際には、全社・全体での評価調整を行うことになります。
そのため、二次評価までの結果を全部収集し、評価結果と問題点
を、制度所管部門がチェック・整理し、二次評価者を招集します。
そのミーティングを円滑に進めるために、どこをどう説明し、調
整作業、コミュニケーション作業を行うか、事前にシナリオを描い
たり、事前に個別に説明や調整提案などの根回しを行っておく、
などの必要があるかもしれません。
このステップの機能を理解し、評価制度運営・運用プロセスをよ
り具体的に理解してもらうために、4つのの課題について、提案し
ていきます。
人事評価の調整には、2つの段階があります。
初めの調整は、二次評価者による一次評価の調整です。
<二次評価>がそれです。
その目的は、
■一次評価者の評価の修正提案 と
■担当・統括する組織内の一次評価者の間での甘辛の差
や偏りなどの調整で、どちらも公正性を高めるためで
す。
どちらも、一次評価者と被評価者がその調整結果に納
得してくれることが目標になります。
100%満足することは難しいと思いますが。
個別の評価項目の評価を問うのではなく、採点ランク
(=査定)結果の特徴などをテーマにして行う調整です。
たとえば、営業一部は、Sランク、Aランクが構成比
20%、30%と高めで、営業二部が、Sランク5%、
Aランク10% というように極端な違いがあった場合
には、調整が必要になります。
この場合、構成比が同じになるように指示するか、ど
ちらかの評価を上げる、または下げるように指示する、
するなどにより納得度が高まるように二次評価者が行い
ます。
この調整は、一次評価者の評価の仕方が経験を通じ
て、他部門の一次評価者との比較や問題点の認識などを
通じて、バラつきや偏りがなくなっていけば、必要性が
下がっていきます。
なお、構成比の問題を発生させないようにするため、
制度規程で、組織内のランク構成比を一定に決めておく
方法もあります。
S10%、A20%、B40%、C20%、D10%
、というふうにです。
もう一つ大事な調整が残っています。
全社・全体レベルでの調整です。
複数の二次評価者間の評価結果の違い。
すなわち、部レベルでの異なる組織を比較しての調整
です。
この調整は、評価結果を、昇給や賞与査定や昇進昇格
の参考に用いることを制度に規定している場合に必要で
す。
二次評価者が、自分の組織の社員を意図的に高く評価
していたり、反対に厳しく評価している。
こんな場合、全体的には公正でないですから調整が必
要です。
この調整は、評価制度を管理する人事部門が主体に行
います。
あるいは、二次評価者が集まり、人事部門の主導で話
し合って調整する。
役員会で調整する、などの方法もあります。
初めはこういう問題が発生するでしょうが、運用して
いきながら、問題の内容や原因を関係者が理解し、
評価の公正さ、納得度をあげ、制度の信頼度を高めてい
くことに意義があると思います。
二次評価者が、一次評価の結果を調整する場合の注意
点をあげます。
もともと、評価項目ごとに、二次評価者が把握してい
ない項目は、一次評価者の評価を認めるべきです。
自分が、掌握し、一次評価者が認識していない・把握
仕切れていないと思う項目についてまず調整・修正しま
す。
また、十分掌握していないけれども、評価の傾向が極
端に良かったり、悪かったり、などの偏りや、部下への
姿勢に好き嫌いなどの傾向がはっきり出ていた場合にも
調整が必要になります。
こうした場合、両者が納得いくよう一次評価者と個別
に話し合い、必要に応じ指導します。
個別の評価項目の評価差については、一次評価者に、
事実に基づいた話をし、意見交換して、調整します。
その結果、一次評価者の評価を尊重することになる場
合もあっていいわけです。
もう一つ。
異なる組織の一次評価者間で、納得できない、信頼で
きない評価の違いが発生した時。
特定の一次評価者の評価に問題があった場合は、その
評価者と個別に話し合い、調整すればいいでしょう。
複数の一次評価者に問題ありと思えた場合、集まって
もらい、それぞれの評価結果を公開して、お互いに問題
点や主張を検討する。
こうして調整を行う方が、初めは面倒で、心配かもし
れませんが、有効と思います。
こうした調整を行うことも、制度規程に盛り込んでお
きます。
二次評価での評価調整が終われば、ひとり一人、S、A、B、C、D という評価ランクを決定します。
先に述べたように、
■評価ランクの基づいて、それぞれ何パーセントずつ配分するか予め決めておく方法 と
■評価ランク順に、点数の幅を決めておき、評価調整結
果の点数に基づいて、ランクを決める方法があります。
私は、導入時には前者をお薦し、制度が安定期に入れ
ば、後者へ移行してもいいのでは、と思っています。
ただ、少人数の規模の場合、この構成比を決めてもそ
れに準じた人数に満たない場合もあります。
柔軟に対応して良いと思います。
また、人事部門や全体評価調整機関(査定決定機関)
で全社レベルの調整を行った場合、二次評価での調整と
異なる査定になることもありえます。
こちらが採用されます。
この事情は、一次評価者と被評価者に面談の際に伝え
る必要があります。
評価の調整を行う場合の一番の問題は、
修正された評価者が納得するかどうか、です。
一次評価者と二次評価者との調整については、両者の
評価の違いの内容と原因・理由を誠実に説明しましょう。
もしかしたら一次評価者=上司と部下との信頼関係に
マイナスになるかもしれませんが、意識付け、動機付け
につながるよう、率直に話し合いましょう。
上司もその上の上司も、しっかり自分のことを見てく
れている、気にかけてくれている、ということをまずわ
かってもらうことも大切と思います。
一次評価者と二次評価者の評価の違いや、偏り・公正
さの欠如などどんな問題があったか、どう調整したかな
どは、報告書として人事部門に提出してもらうようにし
ます。
一次評価者の育成に利用でき、評価者研修の材料にも
すべきです。
また、二次評価者間の調整の内容・結果・問題点につ
いても、人事部門が整理し、報告書としてまとめます。
二次評価者の適性について触れることになるかもしれ
ません。
その結果、どんな問題、どんな影響があったか、など
を記録し、活用してていけば、同じ判断基準、評価基準
で、しっかり評価できる体質、文化が形成されていくと
思います。